ガンダムSEED(アスキラ)&ガンダムOO(ロク刹)の二次創作小説サイトです。
2009/10/29 (Thu)
恋までの距離 3
あの日以来、アスランはキラの顔がまともに見られなかった。キラの姿を目にするたびに、あの光景が蘇ってしまう。
今朝も心配して伸ばされたキラの手を、アスランは振り払ってしまった。そのとき見せたキラの傷付いたような表情が、アスランの胸を締め付けた。
(一体、どうしたんだ、俺は……)
今日も家に帰れば、キラと二人きりなのだと思うと気が重い。
練習着をバッグに詰め、ロッカーのドアを閉めたアスランは深いため息をついた。
「どうした、アスラン?」
隣で着替えていたディアッカに、声を掛けられた。
ディアッカ・エルスマンはアスランと同じ短距離の選手だ。今年のインカレでは、アスランと共に四百メートルリレーで優勝を果たした同期でもある。
「ん? あぁ、ちょっと、な……」
「何、何? なんか悩みでもあるワケ?」
ニヤニヤと笑みを浮かべたディアッカに顔を覗き込まれて、アスランは眉根を寄せた。
「……お前、面白がってるだろ」
「そんなわけないじゃん。友人として心配してるんだぜ。相談に乗ってやるから、話してみろって」
親切心で言っている割には、その笑顔が胡散臭い、とアスランは思った。
揶揄いのネタをわざわざ提供するのも気が引けたが、「なっ?」と肩に手を置かれ、笑顔全開で白い歯を見せられたら、観念するしかなかった。
今、言わなければ、家まで付いて来そうな勢いだったのだ。
あの日以来、アスランはキラの顔がまともに見られなかった。キラの姿を目にするたびに、あの光景が蘇ってしまう。
今朝も心配して伸ばされたキラの手を、アスランは振り払ってしまった。そのとき見せたキラの傷付いたような表情が、アスランの胸を締め付けた。
(一体、どうしたんだ、俺は……)
今日も家に帰れば、キラと二人きりなのだと思うと気が重い。
練習着をバッグに詰め、ロッカーのドアを閉めたアスランは深いため息をついた。
「どうした、アスラン?」
隣で着替えていたディアッカに、声を掛けられた。
ディアッカ・エルスマンはアスランと同じ短距離の選手だ。今年のインカレでは、アスランと共に四百メートルリレーで優勝を果たした同期でもある。
「ん? あぁ、ちょっと、な……」
「何、何? なんか悩みでもあるワケ?」
ニヤニヤと笑みを浮かべたディアッカに顔を覗き込まれて、アスランは眉根を寄せた。
「……お前、面白がってるだろ」
「そんなわけないじゃん。友人として心配してるんだぜ。相談に乗ってやるから、話してみろって」
親切心で言っている割には、その笑顔が胡散臭い、とアスランは思った。
揶揄いのネタをわざわざ提供するのも気が引けたが、「なっ?」と肩に手を置かれ、笑顔全開で白い歯を見せられたら、観念するしかなかった。
今、言わなければ、家まで付いて来そうな勢いだったのだ。
「……ディアッカ」
「ハイハイ」
「中学生に欲情したこと、あるか?」
案の定、ディアッカはぽかんとして、アスランをまじまじと見つめた。
「……ちゅうがくせい?」
「あぁ」
顎に手を当てて、考え込むディアッカを、アスランはロッカールームの長椅子に座って眺めていた。
まるで、有罪判決を待つ犯罪者の気分だ。
「んー、どうだろ。俺、中学生なんて守備範囲外だし。まぁ、一般的にはしないんじゃねぇの? だって、手ぇ出したら、犯罪じゃん?」
「そう、だよな……」
隣にドカッと腰を降ろしたディアッカを気にも留めず、アスランは膝に肘を突き、手の甲に額を押し当てた。
最近、アスランはいつも裸のキラを組み敷く夢を見る。嫌だと泣き喚くキラを無理矢理押さえつけて犯すそんな夢を。
それが、キラを直視できない理由であり、アスランの罪悪感に拍車を掛けていた。
「でも、最近の子は発育がいいし。そんなに色っぽい子だったのか?」
「いや、どちらかと言えば、可愛い部類だと思うが」
今までアスランが付き合ってきた女性のような艶めかしさは、キラにはまだない。
中学生だから当たり前なのだが、だからこそ、アスランはキラに対する感情が何なのかを測りかねていた。
「もしかして、手ぇ出しちゃった、とか?」
「そ…んなわけないだろ!」
思いの外、声が大きくなってしまって、ロッカールームに残っていた僅かな部員がアスランとディアッカを振り向く。
ディアッカは何でもないと愛想笑いを浮かべながら、アスランの肩に腕を回して、顔を寄せ合った。
「煩いよ、お前」
「わ、悪い」
今度は一変して、密談のような格好である。
「それで?」
「あ、あぁ」
アスランは実家で中学三年生の女の子を預かっていること、その子がアスランにとって妹のような存在であること、そして、つい最近、裸を見てしまったことを大まかに説明した。
それを黙って聞いていたディアッカは、納得したような顔で鷹揚に頷く。
「わかった、アスラン。お前、溜まってるだろ?」
「は?」
きっと、すごく間抜けな顔をしていたに違いない。
アスランは一瞬、ディアッカの言葉の意味を理解できなかった。
「要するに、お前が一人暮らしを止めたのも、夜遊びもしないで真面目に家に帰ってたのも、その子のせいなんだろ?」
「ま、まぁ、そうだが」
「じゃあ、お前はどこで性欲を解消してたワケ?」
ディアッカに言われて、アスランは気付いた。
そう言えば、最後に女性を抱いたのはいつだったか。キラに気を使って、一人ですることもあまりなかった気がする。
「そういうことだよ、アスラン君」
ニヤリと嗤ったディアッカに背中を叩かれる。
性的な欲求には淡白なほうだと思っていた――どうしようもなく、疼くこともあるが――アスランは、ガックリと肩を落とした。
しかし、その後に聞こえたディアッカの呟きが、アスランの琴線に触れた。
「中三と同居、ねぇ……。同じ中学三年生でも、キラちゃんだったら喜んじゃうな、俺」
「キラ、ちゃん……?」
聞き覚えのある名前に、アスランの肩がピクリと揺れる。
「そぉ。お前、聞いたことない? すっごく可愛いって評判なんだぜ、『キラ・ヤマト』ちゃん。ここの中等部にいるんだけど」
聞き覚えがあるどころではない。間違いなく、アスランと同居している、先ほどまで話題に上っていた少女のことだ。
ディアッカは、アスランから立ち上る冷気に気付かず、キラのいかに可愛いかを切々と説いた。
キラの可愛さなど、他人に言われるまでもなく知っている。
「――ディアッカ、中学生は守備範囲外じゃなかったのか……?」
感情の一切を押し殺したアスランの声音に、ディアッカは気付かない。
「んー? キラちゃんは別。もぉ、ギューッてしたい!」
ディアッカが想像のキラを抱き締める恰好をした瞬間、プチリ、と何かが切れた。
他人がキラのことをそんな目で見ているなんて、冗談じゃない。
アスランは勢い良く立ち上がり、片足を椅子の上に乗せると、ディアッカの胸倉を掴んで引き上げた。
「お前みたいな女好きに、キラは渡さん!!」
「ぅぐ……っ! まさか…お前の言ってた同…居してる女の子…って……!?」
「あぁ、そうだ。キラ・ヤマトだよ。わかったら、今後一切俺の前でキラの話題を口にするなっ」
掴んでいた胸倉を乱暴に放すと、咳き込むディアッカを刺すような眼差しで見下ろす。そして、ついでにざわめく他の部員達をも一瞥し、アスランは不機嫌もあらわに荷物を担いで部室を後にした。
アスランは愛車に乗り込むと、力任せにドアを閉めた。シートに凭れて、怒りを静めるために目を閉じる。
キラの知名度が大学部にまで及んでいるとは、気付きもしなかった。しかも、『中学生は守備範囲外』と言っていたディアッカにまで目を付けられているらしい。
と言うことは、どれだけの人間がキラのことを知っているのか。
そのまま、暫らく気を静めようと努力したアスランは、徐に携帯電話を取り出した。
電話帳から自宅の電話番号を選んで、通話ボタンを押す。
すると、数回のコールで繋がった。
『はい、ザラです』
まだ幼さの残る声が、受話口から聞こえた。
「キラ、俺だよ」
『お兄ちゃん、どうしたの?』
キラは他人の感情に敏感だから、悟られてはいけないと努めて平静を装う。
「今日は少し遅くなるから、先に寝てて」
『そっか、夕飯はどうするの?』
「帰ってから食べるよ。あ、鍵を掛け忘れないようにね。それから、」
『もぉ! 大丈夫だよ、心配しないで』
子どもじゃないんだから、と拗ねたようなキラの声にアスランは頬を緩めた。
こういうところが、まだ子どもなのだとキラは気付かないのだろう。
(大丈夫。キラはまだ、俺が庇護しなきゃいけない子どもだ)
アスランは安堵した。
「わかったよ。じゃあ、おやすみ、キラ」
『おやすみなさい』
通話を切って、アスランはため息をつく。
電話越しだったから気付かれずにすんだが、こんなに昂った感情を持て余したまま、キラには会えば心配を掛けるだけだ。
どこかで熱を散らさなければ、とアスランは再び携帯電話の電話帳を開いた。
「ハイハイ」
「中学生に欲情したこと、あるか?」
案の定、ディアッカはぽかんとして、アスランをまじまじと見つめた。
「……ちゅうがくせい?」
「あぁ」
顎に手を当てて、考え込むディアッカを、アスランはロッカールームの長椅子に座って眺めていた。
まるで、有罪判決を待つ犯罪者の気分だ。
「んー、どうだろ。俺、中学生なんて守備範囲外だし。まぁ、一般的にはしないんじゃねぇの? だって、手ぇ出したら、犯罪じゃん?」
「そう、だよな……」
隣にドカッと腰を降ろしたディアッカを気にも留めず、アスランは膝に肘を突き、手の甲に額を押し当てた。
最近、アスランはいつも裸のキラを組み敷く夢を見る。嫌だと泣き喚くキラを無理矢理押さえつけて犯すそんな夢を。
それが、キラを直視できない理由であり、アスランの罪悪感に拍車を掛けていた。
「でも、最近の子は発育がいいし。そんなに色っぽい子だったのか?」
「いや、どちらかと言えば、可愛い部類だと思うが」
今までアスランが付き合ってきた女性のような艶めかしさは、キラにはまだない。
中学生だから当たり前なのだが、だからこそ、アスランはキラに対する感情が何なのかを測りかねていた。
「もしかして、手ぇ出しちゃった、とか?」
「そ…んなわけないだろ!」
思いの外、声が大きくなってしまって、ロッカールームに残っていた僅かな部員がアスランとディアッカを振り向く。
ディアッカは何でもないと愛想笑いを浮かべながら、アスランの肩に腕を回して、顔を寄せ合った。
「煩いよ、お前」
「わ、悪い」
今度は一変して、密談のような格好である。
「それで?」
「あ、あぁ」
アスランは実家で中学三年生の女の子を預かっていること、その子がアスランにとって妹のような存在であること、そして、つい最近、裸を見てしまったことを大まかに説明した。
それを黙って聞いていたディアッカは、納得したような顔で鷹揚に頷く。
「わかった、アスラン。お前、溜まってるだろ?」
「は?」
きっと、すごく間抜けな顔をしていたに違いない。
アスランは一瞬、ディアッカの言葉の意味を理解できなかった。
「要するに、お前が一人暮らしを止めたのも、夜遊びもしないで真面目に家に帰ってたのも、その子のせいなんだろ?」
「ま、まぁ、そうだが」
「じゃあ、お前はどこで性欲を解消してたワケ?」
ディアッカに言われて、アスランは気付いた。
そう言えば、最後に女性を抱いたのはいつだったか。キラに気を使って、一人ですることもあまりなかった気がする。
「そういうことだよ、アスラン君」
ニヤリと嗤ったディアッカに背中を叩かれる。
性的な欲求には淡白なほうだと思っていた――どうしようもなく、疼くこともあるが――アスランは、ガックリと肩を落とした。
しかし、その後に聞こえたディアッカの呟きが、アスランの琴線に触れた。
「中三と同居、ねぇ……。同じ中学三年生でも、キラちゃんだったら喜んじゃうな、俺」
「キラ、ちゃん……?」
聞き覚えのある名前に、アスランの肩がピクリと揺れる。
「そぉ。お前、聞いたことない? すっごく可愛いって評判なんだぜ、『キラ・ヤマト』ちゃん。ここの中等部にいるんだけど」
聞き覚えがあるどころではない。間違いなく、アスランと同居している、先ほどまで話題に上っていた少女のことだ。
ディアッカは、アスランから立ち上る冷気に気付かず、キラのいかに可愛いかを切々と説いた。
キラの可愛さなど、他人に言われるまでもなく知っている。
「――ディアッカ、中学生は守備範囲外じゃなかったのか……?」
感情の一切を押し殺したアスランの声音に、ディアッカは気付かない。
「んー? キラちゃんは別。もぉ、ギューッてしたい!」
ディアッカが想像のキラを抱き締める恰好をした瞬間、プチリ、と何かが切れた。
他人がキラのことをそんな目で見ているなんて、冗談じゃない。
アスランは勢い良く立ち上がり、片足を椅子の上に乗せると、ディアッカの胸倉を掴んで引き上げた。
「お前みたいな女好きに、キラは渡さん!!」
「ぅぐ……っ! まさか…お前の言ってた同…居してる女の子…って……!?」
「あぁ、そうだ。キラ・ヤマトだよ。わかったら、今後一切俺の前でキラの話題を口にするなっ」
掴んでいた胸倉を乱暴に放すと、咳き込むディアッカを刺すような眼差しで見下ろす。そして、ついでにざわめく他の部員達をも一瞥し、アスランは不機嫌もあらわに荷物を担いで部室を後にした。
アスランは愛車に乗り込むと、力任せにドアを閉めた。シートに凭れて、怒りを静めるために目を閉じる。
キラの知名度が大学部にまで及んでいるとは、気付きもしなかった。しかも、『中学生は守備範囲外』と言っていたディアッカにまで目を付けられているらしい。
と言うことは、どれだけの人間がキラのことを知っているのか。
そのまま、暫らく気を静めようと努力したアスランは、徐に携帯電話を取り出した。
電話帳から自宅の電話番号を選んで、通話ボタンを押す。
すると、数回のコールで繋がった。
『はい、ザラです』
まだ幼さの残る声が、受話口から聞こえた。
「キラ、俺だよ」
『お兄ちゃん、どうしたの?』
キラは他人の感情に敏感だから、悟られてはいけないと努めて平静を装う。
「今日は少し遅くなるから、先に寝てて」
『そっか、夕飯はどうするの?』
「帰ってから食べるよ。あ、鍵を掛け忘れないようにね。それから、」
『もぉ! 大丈夫だよ、心配しないで』
子どもじゃないんだから、と拗ねたようなキラの声にアスランは頬を緩めた。
こういうところが、まだ子どもなのだとキラは気付かないのだろう。
(大丈夫。キラはまだ、俺が庇護しなきゃいけない子どもだ)
アスランは安堵した。
「わかったよ。じゃあ、おやすみ、キラ」
『おやすみなさい』
通話を切って、アスランはため息をつく。
電話越しだったから気付かれずにすんだが、こんなに昂った感情を持て余したまま、キラには会えば心配を掛けるだけだ。
どこかで熱を散らさなければ、とアスランは再び携帯電話の電話帳を開いた。
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女性
趣味:
読書・カラオケ・妄想
自己紹介:
日々、アスキラとロク刹の妄想に精を出す腐女子です。
ロク刹は年の差カッポー好きの神里のツボを激しく突きまくりで、最早、瀕死状態。
アスキラはキラが可愛ければ何でもオッケーで、アスランはそんなキラを甘やかしてればいいと思います。
そんな私ですが、末永くお付き合いください。
ロク刹は年の差カッポー好きの神里のツボを激しく突きまくりで、最早、瀕死状態。
アスキラはキラが可愛ければ何でもオッケーで、アスランはそんなキラを甘やかしてればいいと思います。
そんな私ですが、末永くお付き合いください。
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