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ガンダムSEED(アスキラ)&ガンダムOO(ロク刹)の二次創作小説サイトです。
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2009/10/29 (Thu)
 前作に引き続き、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に出演することになった前回主役だった僕は、今のところ、前回よりは格段に少ない出演シーンをこなし、早々に控え室へ引き上げた。
 この後は仕事もなく、明日の午後まで久しぶりのオフということもあって、浮かれ気分で化粧を落としていると控えめなノックの後、ディレクターが顔を覗かせた。
「キラ、ちょっといいか……」
 その、申し訳なさそうな様子に、僕は嫌な予感をビシバシと感じたのだった。




 



BACKSTAGE ①




 彼に連れて行かれた別の控え室で、ドアに掲げられた名前を見た途端、僕は自分の予感が的中したことを悟った。
「キラァ、助けてくれ」
「ちょっと、アスラン、落ち着いて」
 そして、部屋に入るなり抱き着かれて、ウンザリとした。

 前作の『機動戦士ガンダムSEED』は、主人公に素人を採用することが決っていた。
 身近な親戚に芸能人がいるおかげで、煌びやかな世界にはまったくと言っていいほど興味がなかった僕は、たまたま友人の付き添いでオーディションの会場に赴き、そこでディレクターと準主役に決定していたアスラン・ザラに目を付けられた。
 それでも、当初はその話を断ったのだ。しかし、特に両親も芸能人で、自身も子役時代から活躍していたアスランのラブコールは凄まじいものがあり、ディレクターのそれとダブルパンチで僕は呆気なく陥落してしまった。
 そして、いざ撮影が開始されると元々素質があったのか、僕の演技力は意外に好評で、ドラマが放送されるや否や、あっという間に人気者になった。
 そうして、ドラマの撮影が順調に進む中、僕は新たな問題に直面する。
 素人の僕に演技のアレコレを教えてくれたアスランが口説き始めたのだ。要するに、彼のこれまでの行動は、すべて下心があってのことだったということで。
 この世界に、そちらの趣向を持つ人間が多いことは噂には聞いていたけれど、まさか僕がその餌食になると思ってもみなかった。
 驚くやら戸惑うやらで、僕が何もできないのをいいことに、アスランはゴリ押し一本で攻め続け、いつの間にかちゃっかりと僕の恋人の座を射止めていた。しかし、それまで押せ押せだったアスランは、僕の戸惑いもちゃんとわかっていて、『キラの心が追い着くまでは無理強いはしないから』って、触れるだけのキスしかしなかった。
 僕も何だかんだとアスランにすっかり絆され、クランクアップする頃には彼を好きだと自覚するようになり、その後、心身ともに彼のモノになった。
 あれ以来、人気が急上昇した僕も、元から売れっ子だったアスランも、忙しくて共演どころかプライベートでも中々会うことも難しくなり、だからこそ、今回の続編の話を聞いたときは二人で喜び合ったのだが――。

 僕は震えるアスランの背中を優しく撫でながら、その顔を覗き込む。
「アスラン、一体、何があったのさ」
 問い掛けたものの、控え室にいる面子を見れば、何があったかなんて一目瞭然で。いつになく弱々しく僕の名前を呼ぶアスランだって、二人の仲を見せ付けたいという思惑が見え隠れしている。
「おい、アスラン。いつまでキラに抱き着いてるつもりだ。いい加減、離れろ!」
「煩いっ。キラは俺の恋人だ。抱き着いて何が悪い!」
「……アスラン…カガリ……」
 お互いに威嚇し合う恋人と従姉の存在に、僕は頭を痛めた。

 付き合い始めた当初から、ドラマ関係者や一部の芸能人の間では、僕とアスランの仲は公然の秘密というか暗黙の了解みたいなものがあった。当然、『ガンダムSEED』の共演者の一人で僕を溺愛する従姉のカガリ・ユラ・アスハもそれを知っていて、反りの合わないアスランとの付き合いを断固反対していた。
 それが数ヶ月前、歌手であり、今作でも僕の相手役を務めるラクス・クラインとドラマの一部のスタッフを交えて食事に行った先で、僕はほんの少し彼女と二人きりなった瞬間を週刊誌に激写されてしまった。
 双方の事務所から交際を否定するコメントを出したものの、騒ぎは収まらず、独占欲の強いアスランはあるイベントで『キラの恋人は俺だ』と公言してしまったのだ。
 さすがに売れている男優同士のカップリングは世間を騒然とさせたけれど、幸いにして、僕とアスランのファンはこちらが唖然とするほどの理解力でもって、二人の交際を応援してくれた。しかし、それがかえって、カガリの対抗心に火をつけてしまったらしい。
 今や、アスランとカガリは僕を挟んで一触即発ムードが漂っていた。

「私は、キラとお前の仲を認めていないっ」
「世間は俺達のことを認めている。今更、お前に認めてもらわなくても結構だ」
「――――っ。お前なんかじゃ、キラを幸せにできない!」
「俺以外にキラを幸せにできる奴なんているはずがない」
 ディレクターと二人のマネージャーが右往左往するのを、僕は諦めの境地で傍観に徹していた。ここまでエキサイトしてしまった二人を止める勇気はない。
「寝言は寝て言え。お前にキラの何がわかる?」
「はっ、何を言うかと思えば。少なくとも、俺はお前の知らないキラを知っているぞ。例えば、どこを弄れば感じるかとか、どう攻めれば可愛く啼く、」
「わーわー!!」
 暫らく様子を見るつもりだったのに、アスランが変なことを言い始めたものだから、僕は慌てて彼の口を塞いだ。
 いくら恋人だと公言しているとは言え、自分のプライベート――しかも、セックスについて知られるなんて冗談じゃない!
 芸能界なんていう世界にいながら、そっち方面にはてんで疎いカガリは案の定、顔を真っ赤にして、口をあんぐりと開けているし、ディレクターとカガリのマネージャーも呆気に取られている。ただ一人、アスランの言動に慣れている彼のマネージャーだけは苦笑していたが。
「アスランッ、君、なんてこと言うの!?」
「何って。あまりにもカガリがわからず屋だから、俺達の仲の良さを、だな……」
「そ、そういうのは、僕達二人が知ってればいいことでしょ!?」

 ――ああ、もう嫌だ。
 恋人宣言事件のときといい、小さい頃からこの世界にいるアスランは、ちょっと世間からズレているというのか、ときどきこうやって突飛な行動に出ることがある。
 まったく悪気はないので強く責められないのだけれど、世間一般では知的でクールと言われている彼がこんな性格だとファンが知ったら、きっと百年の恋も一遍で醒めること請け合いだ。
 まぁ、そんなところも受け入れてしまっている僕も僕だとは思うけれど。

 すると、アスランは何を勘違いしたのか、ニッコリと嬉しそうに笑って、僕の手を取った。
「ごめん、そうだった。キラがどれだけ可愛いかなんて、俺だけが知ってれいばいいよな。他人に話すなんて、勿体ないよ」
 手の甲にチュッ、と口づけを落とす姿は貴公子そのものなのに、だらしなくにやけきった顔がすべてを台無しにしている。
 ホント、君って厄介だ。
 仕事に打ち込んでいるときは誰よりもカッコ良すぎて僕をドキドキさせるくせに、僕の前でだけ甘える姿を見ていると胸がキュンとなる。女の子でもないのに、母性本能を擽られるなんてありえないよ。(だいぶ前にニコルに相談したら『キラさんにはアスランフィルターが掛かっているみたいですね』ってにこやかに言われたんだけど、アスランフィルターって何?)
 こうやって僕はどんどん君を好きになって行くんだろうな、なんてスキスキオーラ全開のアスランをぼんやり眺めていたら、カガリに小突かれた。

「――い…ったぁい!」
「カガリッ、俺のキラに何するんだっ」
 アスランが僕を庇うように抱き締めて、頭部の小突かれたところを撫でてくれる。
「お、お、お前はっ! まんまとこの変態の餌食になって!!」
「人聞きの悪いことを言うな。正真正銘、愛のある行為だ」
「もう、そのことはいいからっ。僕が何で呼ばれたか、話してよ!」
 このままだと、アスランがまた余計なことまで喋っちゃいそうだから、僕は今度こそ二人を必死に止めたのだった。





「つまり、キスシーンが嫌なワケ?」
 二人が問題にしたのは、ユニウスセブン落下事件後、単身、プラントに向かうアスランをカガリが見送るシーンだった。
 アスランが恋人のカガリに、婚約者のユウナを牽制するための指輪を渡してキスをするんだけど、それができないと揉めたらしい。
 あまりにくだらなすぎて、思わずため息が出ちゃうよ……。

「アスランもカガリもプロなんだから、少しくらい妥協したっていいんじゃないの?」
 二人とも、キスシーンは初めてじゃないはずなのに、なんでそんなに嫌がるのかが僕にはわからない。
「俺はカガリみたいな男女とキスするなんて、御免だ」
「私だって、アスランみたいな顔だけ男となんて死んでもイヤだ!」
 あぁ、この展開……。
 ものすごくデジャヴを感じるのは僕だけなのだろうか。
「大体、キラはいいのか!? 俺がお前以外の奴とキスするの!」
「いや…っ。でもね、アスラン、これも仕事だから……」
「キラは俺に対する愛情が足りないっ。俺はキラが他の男と話してるのでさえ、嫌なのに!!」
 ガバリ、と抱き着いてきたアスランをよろけながらも受け止めて、宥めるようにポンポンと背中を叩く。
 うん、よぉくわかってるよ、君の愛情は。
 嬉しいんだけどね、ときどきその愛が大きすぎて上手くキャッチできないんだ。
「だから、キラに抱き着くなと言っているだろう!」
 スッポンのようなアスランを、カガリが躍起になって引き剥がそうとする。
 アスランも意地になって腕に力を込めるものだから、抱き締められる僕は堪ったもんじゃない。痛いと訴えたところで二人の喧嘩が収束するわけじゃないから、僕は顔を顰めることくらいしかできない。
 すると、ディレクターが突然、パンパンと手を叩いて注意を引く。そして、僕達三人の意識がそっちに向いたのを確認して、彼はニッコリと微笑んだ。
 その意味深な笑顔に、ゾクリと悪寒が走った。
「そこで提案なんだが。ここは前回同様、キラにカガリの代役を頼むというのはどうだろう?」

 ああ、やっぱりそういう展開になるんデスネ……。
 前作でも最終決戦の出撃前にアスランとカガリのキスシーンがあって、そのときも同じように揉めた結果、僕がカガリの代役をやらされたのだ。

「でも、でも。僕も二年前より成長してるし、骨格だって女の人みたいに華奢じゃないし!」
「大丈夫。キラは凄く細いし、女なんかより綺麗だよ」
「……それって、あんまり嬉しくない」
 いつの間にか僕の両手を握り締めていたアスランは、さっきまでの不機嫌さは影も潜めて、すっかりやる気満々だ。
 全国放送で誰に憚ることなく、僕とキスできるのが余程嬉しいらしい。
「まぁ、その辺はCGとかで上手く修正するから」
 頼むよ、と言われても困る。
 前のときだって、あれだけカガリに似せた上にCGで合成したにも拘らず、勘のいい一部のファンにはばれてしまった。
 もうこれ以上、恥は掻きたくない。
「わ、私はそんなの認めないぞ!」
 答えに窮していたら、カガリが僕を庇ってくれて。
「じゃあ、カガリがやるのか?」
「――う…それは……っ」
 ディレクターに睨まれて、呆気なく撃沈。
 もう誰も援護してくれる人はいなくなってしまって、僕は仕方なく「はい」と頷くしかなかった。







「気を付けて。連絡、寄越せよ」
「カガリも、がんばれ」
 キスをして、見つめ合って……って、あれ??
「んっ!? んんっ!!」
 台本にはない展開に、僕は慌ててアスランの胸元を叩いた。

『アスラーン、キス長すぎ。キラが苦しがってるぞぉ』
 拡声器から響いたディレクターの言葉に、他のスタッフから笑い声が漏れる。
 アスランが名残惜しそうに僕の下唇を一舐めして、顔を離す。その感触はいつものキスを思い出させて、僕は無意識に身を震わせた。
「……なんで、舌を入れる必要があるのさ」
 人前で濃厚なキスを仕掛けられて、恥ずかしさに顔が赤くなっていることを自覚しながら、睨み付ければ、アスランは涼しい顔をして答えた。
「離れ離れになる恋人同士が、『頑張って』チュ、だけで満足すると思うのか? 俺には無理だ」
「あのね、君の意見はどうでもいいのっ。お願いだから、台本通りにして!」
 一刻も早く、女装した姿から解放されたい!
 鬼気迫る勢いで詰め寄れば、アスランは渋々頷いたけれど……。

 結局、その後もディレクター――ではなく、アスランのダメ出しで六回もリテイクする羽目になったのだった。

 

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神里 美羽
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女性
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読書・カラオケ・妄想
自己紹介:
日々、アスキラとロク刹の妄想に精を出す腐女子です。
ロク刹は年の差カッポー好きの神里のツボを激しく突きまくりで、最早、瀕死状態。
アスキラはキラが可愛ければ何でもオッケーで、アスランはそんなキラを甘やかしてればいいと思います。
そんな私ですが、末永くお付き合いください。
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