『はじめに』でも明記しているとおり、神里は【ロク刹】を推奨しています。
基本的にはニル刹・ニルライ刹です。
ライ刹も嫌いではありませんが、神里が兄貴大好き人間なので。
主人公受け・年の差カップル、最高です。
そんでもって、刹那はロックオンに溺愛されてればいいと思います。
今回は他サイトさんを見ながら、書きたくてウズウズしてた、禁断の兄妹ニル刹♀です。
しかも、ニールがちょっと腹黒い。
でも、刹那には成分の八割が優しさでできていると見せかけている、そんな人です。
そんな兄貴はイヤッ、て人は緊急回避をオススメします。
『ニール、近いうちにこちらに戻ってこられないだろうか。……大事な話がある』
――二年ぶりに聞いた父親の声だった。
だからといって、決して親子仲が悪いわけではない。そもそも、二十六にもなった男が、いつまでも親に依存する方がどうかしている。特に男親と息子の関係なんてそんなもんだ。
ただ気になったのは、その声がひどく憔悴していたこと。
生まれてこのかた、父さんのそんな声を聞いたことがなかった俺は、疎遠になっていた実家への帰省を決意した。
恋情
商才があったのか、片田舎の地主の二男にすぎなかったひい祖父さんは、たった一代で貿易業を軌道に乗せた。そして、アイルランドでも有数の資産家となったディランディ家の跡取りとして育った俺は、大学を卒業後、父の会社に就職し、現在はニューヨーク支社に勤めている。
修行と偽ってまで家を出なくてはならなかった理由は、俺が血の繋がった実の妹に恋をしていたからだ。
俺は、決してもてないわけじゃない。
それなりに女とも付き合ってきたし、経験も積んできた。ただ、どれも妹以上に本気になれなる相手じゃなかっただけ。
そのうち、面倒臭くなって、性欲処理のために一晩限りの女を相手にするようになったけれど。
俺は妹のそばを離れてから四年がたった今でも、かなわないと知りつつ、ずっと捨てきれないまま、心の奥底にしまった恋心をいまだにくすぶらせ続けていた。
迎えはいらないと言ったのに、ディランディ家の所有する高級車はダブリン空港の出口に待ち構えていた。仕方なく乗り込むと、ゆっくりと発進した車は、やがて、空港の敷地を抜けて、大通りへと出た。
俺は小さくため息を吐いて、車窓から空を見上げた。
「トーマス、」
俺が生まれる前からディランディ家に仕えている、専属の運転手に声を掛ける。
「今回、俺が呼び戻されたこと、お前は何か知ってるか?」
トーマスはしばらく逡巡したあと、無愛想に口を開いた。
「……はい。ですが、私の口からは申し上げられません」
「そうか、悪かったな」
まぁ、彼から答えが得られるとは思っていなかったので、予想通りの反応が返ってきたことに苦笑する。
元より無骨な男だ。子供には敬遠されるタイプだが、感情を素直に表現することが苦手なだけで、優しくないわけじゃない。
現に他人の心に機微に敏感な妹が、使用人の中でも特に彼には俺が嫉妬するほど懐いていた。
それ以来、会話もないまま、車は坦々(たんたん)と道をたどる。
会いたくて、でも、会えなくて。
ずっと恋い焦がれていたあの子がいる、あの家へ――。
幼いころに妹と二人でよく眺めた空の青が、今日はやけに忌々しかった。
妹は父さんと父さんが後妻として娶った女性との間に生まれた子供だ。つまり、俺にとっては異母妹に当たる。
ディランディ家に政略結婚に近い形で嫁いだ上、俺を産んで一年もたたないうちに男と駆け落ちした実の母親の記憶はなかったから、物心つくころには父さんの妻となっていた女性を、俺が自分の母親だと認識するのは当然のことだった。
そして、俺が八歳の誕生日を迎えた翌月に生まれたのが、妹の刹那だ。
刹那は我が家のアイドルだった。特に俺と父さんは日々、刹那からの信頼を勝ち取るために必死だった。
しかし、学校以外なら自由な時間を作れる俺と違い、比較的大きな会社の経営者でもあった父さんには刹那に構うにも限界がある。刹那が起きる前に出社し、眠ったころに帰宅するという生活を続けるうちに、やがて、軍配は俺に上がった。
俺と父さんが構いすぎて、刹那が何か行動する前に先回りし、手や口を出した結果、刹那は無表情で無口な少女に育ってしまったわけだが、俺にはそれさえも愛しかった。しかも、母さんでさえわからない微妙な表情の変化を、俺だけが読み取れることが優越感だった。
そうして、風呂もベッドも一緒の生活は、刹那が二次成長期を迎えるまで続けられた。
刹那の身体的な変ぼうが、俺自身の中にある浅ましい劣情を気付かせたのだ。
あれほど可愛がっていた実の妹を欲望の対象にする――何かの間違いだと否定する一方で、刹那と兄妹じゃなければとありもしない願望を夢見た。
しかし、どんなに手を尽くしても、そんな証拠は見つからず、何より俺をどん底へと突き落としたのは、DNA鑑定だった。
実をいえば、母さんを育てた親は本当の親ではなかった。
クルジス出身で戦争孤児だった母さんは、天才科学者で資産家のイオリア・シュヘンベルクに養女として引き取られ、育てられた。
天涯孤独なイオリアのじいさまは、自分が死んだときにはその遺産をすべて義理の娘に譲り渡すと明言するほど、引き取った母さんを実の娘のように可愛がっていた。
要するに、母さんはわざわざディランディ家に入らずとも、一生食うに困らないだけの資産を得ることができるのだ。
ところが、強欲な父さんの弟――つまり、俺の叔父に当たる人物――が、母さんの出自を理由に父さんの再婚を反対した。
当時、父さんと俺の実母とは既に離婚が成立していて、父さんは一歳の子供を抱えたやもめだった。
仮に父さんが死にでもすれば、まだ赤ん坊の俺の親権者はいなくなる。当然、莫大な遺産を相続した未成年の俺には後見人が必要になる。後見人になれば、財産の管理権が得られるのだから、派手好きの叔父貴にとってみれば、これほどおいしい話はないだろう。
もしかしたら、叔父貴は既に父さんを殺すことを画策していたのかもしれない。
父さんは結局、叔父貴の反対を押し切って結婚。
その確執が元で、叔父貴は母さんの胎内に宿った子供にも疑いの目を向けた。――本当に父さんの遺伝子を持つ子供なのか、と。
あのときの父さんの憤激具合は凄まじかったが、母さんは毅然として、こう言い切った。
『そんなにお疑いになるなら、この人の子供であることをきちんと証明しましょう』
そして、言葉通り、DNA鑑定をした結果、刹那は父さんの子供だということが証明されたのだ。叔父貴は悔しそうに負けを認めて、すごすごと帰っていったが、数年後、俺がその事実に打ちのめされるとは思ってもみなかった。
都市部から少し離れた場所にある実家は、元は貴族の邸だったといわれているが、本当のところは俺にもわからない。ただ、やたら高い塀と重厚な門扉に囲まれた邸は、どこか閉そく的で息苦しくて、あまり好きになれなかった。
トーマスの運転する車は、俺の苦手な邸の敷地内に入り、車寄せで停車した。
開けられたドアから外に出ると、執事のアドルフが俺の手から荷物を受け取る。
「お帰りなさいませ、お坊ちゃま」
「……アドルフ。いい加減、お坊ちゃまはよしてくれよ。俺ももう、そんな歳じゃないんだからさ」
アドルフもトーマス同様、古くからこの家に仕えている使用人で、俺のおしめを替えたこともあると豪語する強者だから、到底、俺が敵う相手じゃない。
いつものように、「さようでございますか」と俺の言い分は見事にスルーされてしまった。きっと、彼が生きている間は、“お坊ちゃま”と呼ばれ続けられるんだろう。
「ところで、父さんと母さんは?」
二人の所在を尋ねれば、アドルフはすました顔に苦渋の色をにじませた。
「ただいまお呼びしますので、居間でお待ちください」
階段を上るアドルフの背中を見送りながら、俺は今更ながら邸の雰囲気に気がついた。 俺がまだ、この家で暮らしていたときの活気がまるでない。使用人を含めた邸全体が暗く、どこか悲しみに包み込まれている、そんな感じだ。もしかしなくても、これが呼び戻された原因だと俺は確信していた。
居間のソファに腰を下ろすと、程なくして父さんと母さんが姿を現した。二人とも、俺の記憶にある姿よりやつれていて、正直、驚いた。
「ああ、ニール。私たちはどうしたらいいの?」
「かあさん……」
俺の姿を見るなり、縋りつくように泣き崩れた母さんを支えてやりながら、その後ろにいる父さんの顔を伺う。
父さんは俺から母さんを受け取ると、支えるようにしてソファに座らせた。
「一体、何があったんだ? それに、刹那がいないのはどうして?」
二人の狼狽え方も尋常じゃないが、この場に刹那がいないことが不自然だ。あの子は家族のだれよりも俺に懐いていたから、俺が帰省したと知れば、一目散に会いに来そうなものなのに。
俺は、通信越しに捨てられた子犬のような目をした刹那を思い出していた。
刹那は基本的に我がままを言わない。
例え、寂しくても寂しいと言えない。
人――特に家族に対してはその行動が顕著で、仕事の都合で帰省できないことを告げると、俺の嘘を真に受けて「頑張れ」と励ましてくれた。
そのたびに罪悪感と安堵感で、俺の心はいつも張り裂けそうだった。しかし、今、会ってしまえば、俺は刹那を想う気持ちを止められずに、きっと酷いことをしてしまう。だから、意図的に刹那に会うことを俺自身で戒めたのだ。
――ところが、どうだ。
会わないと誓ったのは俺なのに、こんなに近くにいて姿が見られないと不安になる。
どうして、俺に会いに来ない?
俺のことなんて、もう忘れてしまったのか。それとも、俺なんてどうでもよくなるほど、好きな男ができたのか。
本当に、俺は何て身勝手な男なんだろうと思わずにはいられなかった。
「刹那は……ここ数日、ずっと部屋に閉じこもっているの」
母さんの言葉が俺の思考を停止させた。
「……え?」
「三日ほど前、この家にある夫婦が訪ねてきた」
刹那が部屋に閉じこもっている理由とその夫婦が訪ねてきたことに関連性を見いだせずにいると、父さんはジャケットの内ポケットからあるものを取り出して、俺に寄越した。
「――っ!?」
俺は言葉もなく凍り付く。
それは、何の変哲もない、たった一枚の写真。
中東の民族特有の、小麦色の肌をした中年の夫婦とその子供と思われる少女の写った、どこにでもいる幸せそうな家族の集合写真だ。
しかし、ディランディ家の人間にとっては笑っていられるものではなかった。
「……こ、れは……」
「右側にいるのはハサン・S・セイエイ氏、その隣が奥さんのシャロンさん。そして、二人の前にいるのが娘のリマさんだ。……よく似ているだろう」
まるで他人事のように父さんが言う。
だって、これは似ているなんてレベルじゃない。
母さんそっくりの見知らぬ少女と刹那によく似た見知らぬ女性。
これではまるで刹那が――。
「取り違いがあったかもしれないなんて……今更、そんな……嘘よっ」
再び取り乱し、泣きわめく母さんを父さんが抱き締める。しかし、俺にはそんな二人を気に掛けてやれるだけの余裕はなかった。
確かに、刹那は家族のだれにも似ていなかった。
でも、母さんの家族は親族に至るまで亡くなっているし、隔世遺伝の可能性も否定できなかった。さらにはDNA鑑定というお墨付きまで――。
「――そうだ。DNA鑑定の結果があるじゃないか」
身内のいざこざで検査したものだが、あれがちゃんとした証拠になるはずだと言えば、父さんは苦しそうに目を閉じてかぶりを振った。
「それが無理なんだ、ニール」
「どうして――!?」
「あれは、出産直後に刹那の体液を採取して鑑定したものなんだ。しかし、取り違いがあったのは、そのあと――つまり、新生児室に移ってかららしい」
父さんの話によれば、セイエイ氏は父さんと同じ貿易業を営む中堅企業の社長らしい。そして、今回のことはリマという少女が病に倒れたことから発覚したのだという。娘は既に亡くなっていて、セイエイ氏はたまたま出席したパーティの席で、父さんに連れられた母さんと刹那を見たそうだ。
この写真の男は、亡くなった娘にそっくりな母さんと妻に似た刹那を見て、どう思ったのだろうか。
詳しく調べてみれば、自分の娘と刹那が同じ病院で、しかも、たった一日違いで生まれたことが判明。病院には当時のカルテは残っていなかったらしいが、DNA鑑定をすれば、真実は明らかになる。
しかし、病気の検査の課程で担当医師から娘が他人の子供かもしれないと示唆され、今更、本当のことがわかったところで、俺には同情などできない。
「そんな……っ」
刹那が妹じゃないかもしれないなんて――。
だが、激しい憤りは急速に冷めていく。その代わりに沸き上がったのは、昏い感情だった。
そうだ、刹那が妹じゃなくて、俺に何の不都合があるのか。
妹じゃなければ、堂々と愛せる。結婚だってできるし、俺の子供を産んでもらうことだってできるのだから。
悲しみに暮れる二人を尻目に、俺は笑いをかみ殺し、写真をローテーブルに置いた。
「刹那に……会いに行ってくるよ」
――心に闇が広がった気がした。
刹那の部屋の前に立ち、軽くノックする。
もちろん、返事などあるはずもなかったけれど。
「刹那、お兄ちゃんだ。入るぞ」
まだ昼日中だというのに、カーテンを閉め切ったままの刹那の部屋はほの暗い。
俺はこんもりと山をつくったベッドに近づき、その端に腰を下ろした。俺の体重でわずかに沈んだスプリングに反応するように、刹那が身じろぐ。寝ているわけではなさそうだ。
「ただいま、刹那。お兄ちゃんに顔を見せてくれないか?」
静かに、なだめるように言えば、刹那はゆっくりと起き上がった。
いつからそうしていたのか、くしゃくしゃに乱れた髪を梳いて整え、俯いた顔を頬に手を添えて上げさせた。
「ああ、かわいそうに」
やつれた頬と泣きはらした瞼が痛々しいと思いながらも、言葉とは裏腹に昏い悦びは広がっていくばかりだ。
俺は両の瞼にちゅっ、と口吻(くちづ)けた。この想いを自覚してからはすることのなかったスキンシップに、刹那が驚いたように目を見開く。
「母さんたちから聞いたよ、辛かったな」
刹那の蠱惑(こわく)的な深緋(こきひ)色の瞳から、ぽろりと大粒の滴がこぼれ落ちた。
「でも、お前だってわかってるだろ? このままじゃ、駄目なんだ。ちゃんと検査を受けて、はっきりさせよう」
諭すように言うと、刹那は両目をぎゅっ、とつむって、かぶりを振る。
「……ぃ…やだ……っ」
本来なら、刹那の嫌がることを無理に押し付けたくはない。ましてや、これまで一緒にすごしてきた家族を、本当の家族じゃないと決定づけるための検査なんて、だれが望むだろう。
でも、俺は刹那が妹じゃないという明確な答えが欲しかった。
「刹那」
「――嫌だ……いやだいやだいやだいやだ。検査なんて受けたら、俺は……俺たちは家族じゃなくなる」
「何、言ってるんだ。どんな結果が出ようと、俺たちが家族であることには変わりないだろ? これまでも、これからも、ずっと」
――詭弁(きべん)だと思った。
自分で言いながら、何て空々しい説得だろう、と。
俺が望む家族の形は、刹那が望むそれとはまったく違うものだというのに。
「違う……っ俺は……俺は」
興奮するから、嗚咽も酷くなって、言葉もろくに紡げない。
「刹那――刹那、落ち着けって。何が『違う』んだ?」
しかし、刹那は激しく首を振る。ひっく、ひっく、としゃくり上げ、呼吸するのも苦しそうだ。
俺は一回り以上小さな、刹那の身体を抱き寄せた。そして、幼い子供にするように、背中をぽんぽんと優しくたたく。
「ゆっくりでいい。何が『違う』のか俺に教えてくれないか、刹那?」
落ち着いたころを見計らって言えば、刹那は腕の中で小さく頷いた。
「俺は……きっと、おかしいんだ……」
刹那が、ぽつりと呟く。
俺は話を遮らないように、華奢な身体をただ抱き締めていた。
「ニールが本当の兄じゃないかもしれないと知って、俺は――嬉しかったんだ。お父さんとお母さんが家族じゃないと考えると悲しくて、寂しいのに、俺は……」
ニールと血の繋がりがないことが嬉しかった、と刹那は繰り返し言う。
俺は、その言葉の意味を理解できなかった。
もしかしたら、都合の良い夢を見ているのか。それとも、幻聴なのか。
抱き寄せた刹那の身体を引き離してみても、顔を俯かせたままで、その表情を読み取ることはできない。しかし、小さく震える身体が嘘をついているようには見えなかった。
「……ニール、この気持ちは一体何なんだ? ニールとは他人だと知ってから、俺はずっと胸が苦しいんだ。嬉しくて、でも、ニールと引き離されるのが怖い……」
服の胸のあたりをぎゅっ、と掴む刹那の頬に手を添えて、顔を持ち上げる。苦しそうに眉を寄せた、その眉間にキスをして、また潤み始めた刹那の瞳をのぞき込んだ。
「俺と引き離されるのは嫌か?」
刹那が素直に頷く。
「そんなに俺が好き?」
ためらいがちに、それでもしっかりと「好きだ」と答えが返ってきた。
「それは兄妹として? それとも、他の別な感情で?」
刹那は再び顔を俯かせて、首を横に振った。
「わからない。……でも、兄妹を好きだと想う気持ちとは違う気がする」
世間知らずな、刹那――。
こんなことにさえならなかったら、一生、知るはずのなかったその恋を、俺がこの手ですくい上げてあげるから。
「――刹那、家族になろう」
静かに告げると、刹那が慌てて顔を上げた。その瞳は驚きに見開かれている。
「でもっ……俺たちは、もう……っ」
「ああ、そうだ。今までのようには戻れない。でも、それだけが家族じゃないだろ?」
刹那は理解できないというように、首を傾げる。
「兄妹に戻れないんだったら、夫婦になればいい」
「ふうふ……?」
初めて口にする単語のように、たどたどしく言葉にする刹那が可愛らしい。
「結婚すれば、俺たちはずっと一緒にいられる。今の両親のことだって、これまで通り、『お父さん』『お母さん』って呼んでいいんだ」
刹那が俺のことを『兄』とは呼ばず、『ニール』と呼ぶようになったのは、一体いつごろからだっただろう。
いつだって、無意識に想いを伝えてくれていたのに、俺はずっと気付かなかった。
すると、刹那の顔がくしゃりと歪んだ。
「……本当に? ニールはそれでいいのか?」
何が不安なのか、表情よりも雄弁に語る深緋色の瞳が揺れる。
「ニールはもてるから……。俺のような可愛げもない女となんて」
そして、俺は刹那の不安に合点する。
俺は、思いがけず――刹那自身も気付かないくらいの鈍感さではあるが――刹那からの告白を受けて、舞い上がるあまり、大事なことを言い忘れていたのだ。
「馬鹿だなぁ、刹那は」
痛みが伴わないような力加減で、それでも、逃げられないような拘束力でもって、刹那の頬を両手で捕らえた俺は、ばら色の唇にちゅっ、と軽く吸い付き、こつり、と額を合わせた。
瞬間、何をされたのかを悟り、口元を両手で覆い隠した刹那の真っ赤な顔に、思わず頬が緩む。
「お前より可愛くて、大切な女の子なんているかよ」
だから、お前は安心して俺にすべてを預けていればいい。
世界中の悪意から、俺がお前を守ってみせるから。
「刹那、好きだよ。――愛してる」
――何年も何年も積み重ね、凝り固まって歪んだ恋情。
例え、この狂気のような愛がお前を傷つけたとしても、お前だけは手放せない。
ロク刹は年の差カッポー好きの神里のツボを激しく突きまくりで、最早、瀕死状態。
アスキラはキラが可愛ければ何でもオッケーで、アスランはそんなキラを甘やかしてればいいと思います。
そんな私ですが、末永くお付き合いください。