ガンダムSEED(アスキラ)&ガンダムOO(ロク刹)の二次創作小説サイトです。
2009/10/29 (Thu)
Eternal Snow 2
アスランが通うザフト学園は良家の子息ばかりが在籍している全寮制のお坊ちゃん学校だから、長期休暇ともなれば特に理由がない限り、寮に残ることは許されない。
ましてや、クリスマスと新年を挟んだ冬休みは特に忙しい時期でもあり、アスランも例に漏れず、アプリリウスの別邸に帰宅していた。
最初にその計画を持ち出したのは、ラスティ・マッケンジーだった。彼は、アスランが本音で話せる数少ない友人の一人だ。
「なぁ、今日こそはカガリの家に押し掛けないか?」
ザラ家のアスランの私室でとんでもないことを言い出した友人に、アスランは苦笑する。
「カガリに殴られたいのか、ラスティ?」
ラスティ同様、アスランの親しい友人でありルームメイトでもあるカガリ・ヤマトは、世界各国にホテル事業を展開する『オーブ・オリエンタル・リゾート』の御曹司だ。小柄――これは本人がだいぶ気にしている――なのに、負けん気が強くて、曲がったことが大嫌い。少しでも自分の正義に反すれば上級生だろうがなんだろうが立ち向かっていく、将来、上に立つ立場の人間としては些か問題のある、直情型の少年だ。
彼の実家はオーブ連合首長国にあるのだが、口喧しく説教をしてくるマーナという世話係に会いたくないとの理由で、カガリは長期休暇の殆どをプラントの別邸で過ごしていた。
「だって、冬休みに入ってからあいつの家に一回も招待されたことがない。なんでだ?」
ラスティが不満気味に文句を言うと、もう一人の友人――ニコル・アマルフィーも鷹揚に頷く。
「夏休みのときには何度も呼んでくれたのに、この冬休みに限って、家に近寄ることさえ許されないなんて絶対におかしいですよ。何か隠し事があるに決ってます!」
そう断言して、こちらも絶対に秘密を暴くと鼻息も荒く意気込んでいる。
確かに「家には来るな」と一方的に宣言されたことは、アスランも不思議に思わないでもなかったが、誰にでも知られたくないことの一つや二つはあるし、いずれはその理由も話してくれるだろうと無理に聞くことはしなかった。しかし、二人は痺れを切らしたらしい。
今日こそは、と息巻く二人に引き摺られるようにして、アスランは一路カガリの家に向かうことになった。
今にも雪が降り出しそうな寒空の下、アスラン達はカガリの屋敷に到着した。
無駄に大きい門の前で一度車を止めさせると、門柱の呼び鈴を押す。
『はい』
ヤマト家の執事を務めるトダカが、モニター越しに現われた。
「アスラン・ザラです。カガリ、いますか?」
『今、門をお開けします』
ぷつりとモニターの映像が切れ、次の瞬間、ガラガラと巨大な門が音を立てて開く。開き終わるのを待って、車は門を潜り抜けた。
元は貴族の別荘だったという洋館は、ザラ家の別邸に比べるとやや小さいが、それでもカガリ一人と彼の世話をする使用人が住むには充分な広さがあった。
その屋敷の正面玄関の前に車を着けると、中から出てきたトダカが車のドアを開けた。運転手に帰りはこちらから連絡する旨を伝えて一時引き帰らせ、トダカに案内されるまま屋敷の玄関を潜った。
「あの、カガリは?」
屋敷の中に入っても肝心のカガリは見当たらず、後ろに控えたトダカに尋ねる。
「もうすぐお見えになります」
その言葉通り、屋敷の二階からバタバタと騒々しい足音が聞こえて、深紅の絨毯が敷き詰められた階段からカガリが必死に駆け下りてくるのが見えた。
「おおお、お前ら、何しに来たー!」
さすがに彼らが生きるこの世界で、アポイントもなしの突然の訪問は恥ずべきことなのだが、ラスティとニコルは肩を竦めたりして、悪びれた様子は微塵もない。
「友達に向かって、『何しに来た』は失礼なんじゃない?」
「そうですよ、カガリ。貴方が帰国する前に、折角遊びに来てあげたのに」
「『来てあげた』って、恩着せがましいこと言うなっ。誰も頼んでないぞ。大体、アスランが付いていながら何でこんなことになってるんだ」
「この二人の暴走を、俺一人で止めろって言うのか?」
カガリが、むむっと顔を顰める。
「そ、それでもだ。何とかして止めるのが、お前の役割だろうが!」
と無茶な注文をされて、アスランは苦笑する他なかった。
「取りあえず、今日は帰ってくれ。そんなに我が家で遊びたいなら、後日改めて招待するから」
カガリは何かに急かされるように彼らの背中を押して、屋敷の外へ出そうとする。
「お、おいっ。何だよ」
「ちょ、ちょっと……」
彼らはぐいぐいと背中を押されて、カガリの態度に戸惑うばかりだったのだが――。
「ただいま。カガリ、すごいよ。雪が降ってきて――って、あれ、お客様?」
澄んだ声が玄関フロアに響いた。
「キラッ!」
カガリの視線を追って、アスランたちも声の主を見遣る。
上品なベージュのシフォンワンピースと、黒いニットのロングカーディガンに身を包んだ可愛らしい少女が首を傾げて、アスラン達の顔を見渡す。
(――何故、彼女がここに……?)
アスランは彼女を呆然と見つめた。
透き通るような白い肌とチョコレートブラウンの長い髪、そして、透明度の高い紫水晶の大きな瞳。
アスランがこの十ヶ月の間、片時も忘れることのなかった少女が目の前にいた。
「こちらにいらしてたんですか、キラさん?」
「あ、ニコル。久しぶり」
少女――キラはニコルに向かって、にっこりと微笑んだ。
「何、ニコル。この可愛い子と知り合いなワケ?」
ニコルは一瞬キョトンとし、「あぁ」と納得したように頷いた。
「ラスティとアスランは、カガリの誕生日パーティに出席しなかったから知らないんですね。彼女はカガリの妹のキラさんです」
「はじめまして、双子の妹のキラです。兄がいつもお世話になってます」
アスランの視界の隅で、額に手を当てるカガリの姿が目に入った。
(――キ、ラ……)
アスランは、喜びで緩みそうになる口元を片手で押さえた。
もう一度会いたいと願っていたあのときの少女が、まさかカガリの妹だったなんて――…。
「え、マジで!? すっげぇ可愛いんだけど」
ラスティが驚きの声を上げると、
「ですよねぇ。乱暴者のカガリの妹とは思えませんよねぇ」
と、ニコルがしみじみ呻る。
「う、うるさい! オレとキラはれっきとした兄妹だ!!」
普段なら騒音でしかないカガリの喚き声が、今日はBGMのように聞こえる。
近付いてみると、やはり彼女は細くて小さかった。抱き締めれば自分の腕にすっぽりと収まってしまいそうな彼女を見つめていると、アスランはどうしようもなく庇護欲をかき立てられた。
「俺のこと、覚えてる……?」
躊躇いがちに問い掛けると、アスランを見上げるキラの瞳が、大きく見開かれた。
これで「覚えていない」と言われたら、きっとショックで寝込んでしまうだろう。しかし、彼女は頬を染めて、小さく頷いた。
(――――っ、やばい。すごく嬉しいかも)
たった一度――それも、お互いに名前も名乗らなかったのにも拘わらず、彼女が自分を覚えていてくれたことが信じられなかった。と同時に、彼女の言動で一喜一憂する自分自身に呆れる。
「カガリのルームメイトのアスラン・ザラです。この間は楽しかったよ」
「あの、僕も楽しかった、です……」
「そっか、よかった」
舞い上がりそうな自分を叱咤し、平常心を装いながらアスランはキラを見つめた。
やはり、可愛いと思う。
特定の誰かを見て、こんなにも心が躍ることは今までなかったし、自然と笑みが零れるのも初めての経験だ。
(――ああ、そうか……)
こんなに心が揺さぶられるのも、あれほど彼女について知りたいと思ったのも、今目の前にいる彼女が好きだからだ。
きっと、出遭ったあのときから。
完全に、アスランの一目惚れだった。
「ア、アスラン……?」
「おいおい、マジですか?」
これほど優しく微笑むアスランを見るのは初めてだろう、ラスティとニコルは驚きを隠せないようだ。なぜなら、例え社交辞令であっても、アスランが女性と過ごして『楽しかった』と笑う人間ではないと彼らは知っていたから。
だが、『二人の世界』に没頭していたアスランは、すっかり忘れていた。――彼女の肉親がすぐ傍でこの様子を見ていたことを。
「……お前ら、知り合いだったのか?」
突然、割り込んできたカガリに、アスランは既視感を覚える。
キラが『口煩い』と言っていた兄はカガリのことだろうから、あのとき、電話を掛けてきたのも彼に違いない。
恋愛の機微には疎いくせに、彼の本能は妹に好からぬ想いを抱く人間を察知したらしい。重ね重ね良い所で邪魔してくれる、とアスランは眉間に皺を寄せた。
「彼女とは、今年の二月に知り合ったんだよ」
「そぉなの、二月に友達の誕生日パーティがあったでしょ? そのときに、ちょっとだけお話したの」
アスランは『二月』と『友達の誕生日』というキーワードに反応する。
にっこり笑って、アスランとの出逢いを説明するキラの肩を掴んだ。
「君はラクスとはどういう知り合いなの?」
「僕とラクスは寮のルームメイトなんです」
やはり、あのピンクの歌姫はキラのことを知っていて、わざとアスランにその情報を隠していた。
「……そう、なんだ」
アスランの耳に、彼女の高らかな笑い声が聞こえた気がした。
あの日、あのホテルで催されたパーティは幼馴染みの誕生日パーティただ一つだけだった。
アスランはあの少女について、幼馴染みに何度も問い質した。少女ほどの存在ならば目立つはずだし、着物を着ていた人物など、アスランが知る限り、あの会場には少女以外いなかったからだ。
しかし、幼馴染みは「知らない」の一点張りで、結局、アスランは引き下がるしかなかった。――最も、彼女の裏の性格を良く理解しているアスランは、その証言を信頼する気などなかったのだが。
その年の春、ザフト学園の中等部に在学していたアスランは、そのまま高等部へ進学した。
そして、夏が過ぎ、秋を越えて、再び少女と出遭った冬を迎えた。
アスランはあの少女について、幼馴染みに何度も問い質した。少女ほどの存在ならば目立つはずだし、着物を着ていた人物など、アスランが知る限り、あの会場には少女以外いなかったからだ。
しかし、幼馴染みは「知らない」の一点張りで、結局、アスランは引き下がるしかなかった。――最も、彼女の裏の性格を良く理解しているアスランは、その証言を信頼する気などなかったのだが。
その年の春、ザフト学園の中等部に在学していたアスランは、そのまま高等部へ進学した。
そして、夏が過ぎ、秋を越えて、再び少女と出遭った冬を迎えた。
Eternal Snow 2
アスランが通うザフト学園は良家の子息ばかりが在籍している全寮制のお坊ちゃん学校だから、長期休暇ともなれば特に理由がない限り、寮に残ることは許されない。
ましてや、クリスマスと新年を挟んだ冬休みは特に忙しい時期でもあり、アスランも例に漏れず、アプリリウスの別邸に帰宅していた。
最初にその計画を持ち出したのは、ラスティ・マッケンジーだった。彼は、アスランが本音で話せる数少ない友人の一人だ。
「なぁ、今日こそはカガリの家に押し掛けないか?」
ザラ家のアスランの私室でとんでもないことを言い出した友人に、アスランは苦笑する。
「カガリに殴られたいのか、ラスティ?」
ラスティ同様、アスランの親しい友人でありルームメイトでもあるカガリ・ヤマトは、世界各国にホテル事業を展開する『オーブ・オリエンタル・リゾート』の御曹司だ。小柄――これは本人がだいぶ気にしている――なのに、負けん気が強くて、曲がったことが大嫌い。少しでも自分の正義に反すれば上級生だろうがなんだろうが立ち向かっていく、将来、上に立つ立場の人間としては些か問題のある、直情型の少年だ。
彼の実家はオーブ連合首長国にあるのだが、口喧しく説教をしてくるマーナという世話係に会いたくないとの理由で、カガリは長期休暇の殆どをプラントの別邸で過ごしていた。
「だって、冬休みに入ってからあいつの家に一回も招待されたことがない。なんでだ?」
ラスティが不満気味に文句を言うと、もう一人の友人――ニコル・アマルフィーも鷹揚に頷く。
「夏休みのときには何度も呼んでくれたのに、この冬休みに限って、家に近寄ることさえ許されないなんて絶対におかしいですよ。何か隠し事があるに決ってます!」
そう断言して、こちらも絶対に秘密を暴くと鼻息も荒く意気込んでいる。
確かに「家には来るな」と一方的に宣言されたことは、アスランも不思議に思わないでもなかったが、誰にでも知られたくないことの一つや二つはあるし、いずれはその理由も話してくれるだろうと無理に聞くことはしなかった。しかし、二人は痺れを切らしたらしい。
今日こそは、と息巻く二人に引き摺られるようにして、アスランは一路カガリの家に向かうことになった。
今にも雪が降り出しそうな寒空の下、アスラン達はカガリの屋敷に到着した。
無駄に大きい門の前で一度車を止めさせると、門柱の呼び鈴を押す。
『はい』
ヤマト家の執事を務めるトダカが、モニター越しに現われた。
「アスラン・ザラです。カガリ、いますか?」
『今、門をお開けします』
ぷつりとモニターの映像が切れ、次の瞬間、ガラガラと巨大な門が音を立てて開く。開き終わるのを待って、車は門を潜り抜けた。
元は貴族の別荘だったという洋館は、ザラ家の別邸に比べるとやや小さいが、それでもカガリ一人と彼の世話をする使用人が住むには充分な広さがあった。
その屋敷の正面玄関の前に車を着けると、中から出てきたトダカが車のドアを開けた。運転手に帰りはこちらから連絡する旨を伝えて一時引き帰らせ、トダカに案内されるまま屋敷の玄関を潜った。
「あの、カガリは?」
屋敷の中に入っても肝心のカガリは見当たらず、後ろに控えたトダカに尋ねる。
「もうすぐお見えになります」
その言葉通り、屋敷の二階からバタバタと騒々しい足音が聞こえて、深紅の絨毯が敷き詰められた階段からカガリが必死に駆け下りてくるのが見えた。
「おおお、お前ら、何しに来たー!」
さすがに彼らが生きるこの世界で、アポイントもなしの突然の訪問は恥ずべきことなのだが、ラスティとニコルは肩を竦めたりして、悪びれた様子は微塵もない。
「友達に向かって、『何しに来た』は失礼なんじゃない?」
「そうですよ、カガリ。貴方が帰国する前に、折角遊びに来てあげたのに」
「『来てあげた』って、恩着せがましいこと言うなっ。誰も頼んでないぞ。大体、アスランが付いていながら何でこんなことになってるんだ」
「この二人の暴走を、俺一人で止めろって言うのか?」
カガリが、むむっと顔を顰める。
「そ、それでもだ。何とかして止めるのが、お前の役割だろうが!」
と無茶な注文をされて、アスランは苦笑する他なかった。
「取りあえず、今日は帰ってくれ。そんなに我が家で遊びたいなら、後日改めて招待するから」
カガリは何かに急かされるように彼らの背中を押して、屋敷の外へ出そうとする。
「お、おいっ。何だよ」
「ちょ、ちょっと……」
彼らはぐいぐいと背中を押されて、カガリの態度に戸惑うばかりだったのだが――。
「ただいま。カガリ、すごいよ。雪が降ってきて――って、あれ、お客様?」
澄んだ声が玄関フロアに響いた。
「キラッ!」
カガリの視線を追って、アスランたちも声の主を見遣る。
上品なベージュのシフォンワンピースと、黒いニットのロングカーディガンに身を包んだ可愛らしい少女が首を傾げて、アスラン達の顔を見渡す。
(――何故、彼女がここに……?)
アスランは彼女を呆然と見つめた。
透き通るような白い肌とチョコレートブラウンの長い髪、そして、透明度の高い紫水晶の大きな瞳。
アスランがこの十ヶ月の間、片時も忘れることのなかった少女が目の前にいた。
「こちらにいらしてたんですか、キラさん?」
「あ、ニコル。久しぶり」
少女――キラはニコルに向かって、にっこりと微笑んだ。
「何、ニコル。この可愛い子と知り合いなワケ?」
ニコルは一瞬キョトンとし、「あぁ」と納得したように頷いた。
「ラスティとアスランは、カガリの誕生日パーティに出席しなかったから知らないんですね。彼女はカガリの妹のキラさんです」
「はじめまして、双子の妹のキラです。兄がいつもお世話になってます」
アスランの視界の隅で、額に手を当てるカガリの姿が目に入った。
(――キ、ラ……)
アスランは、喜びで緩みそうになる口元を片手で押さえた。
もう一度会いたいと願っていたあのときの少女が、まさかカガリの妹だったなんて――…。
「え、マジで!? すっげぇ可愛いんだけど」
ラスティが驚きの声を上げると、
「ですよねぇ。乱暴者のカガリの妹とは思えませんよねぇ」
と、ニコルがしみじみ呻る。
「う、うるさい! オレとキラはれっきとした兄妹だ!!」
普段なら騒音でしかないカガリの喚き声が、今日はBGMのように聞こえる。
近付いてみると、やはり彼女は細くて小さかった。抱き締めれば自分の腕にすっぽりと収まってしまいそうな彼女を見つめていると、アスランはどうしようもなく庇護欲をかき立てられた。
「俺のこと、覚えてる……?」
躊躇いがちに問い掛けると、アスランを見上げるキラの瞳が、大きく見開かれた。
これで「覚えていない」と言われたら、きっとショックで寝込んでしまうだろう。しかし、彼女は頬を染めて、小さく頷いた。
(――――っ、やばい。すごく嬉しいかも)
たった一度――それも、お互いに名前も名乗らなかったのにも拘わらず、彼女が自分を覚えていてくれたことが信じられなかった。と同時に、彼女の言動で一喜一憂する自分自身に呆れる。
「カガリのルームメイトのアスラン・ザラです。この間は楽しかったよ」
「あの、僕も楽しかった、です……」
「そっか、よかった」
舞い上がりそうな自分を叱咤し、平常心を装いながらアスランはキラを見つめた。
やはり、可愛いと思う。
特定の誰かを見て、こんなにも心が躍ることは今までなかったし、自然と笑みが零れるのも初めての経験だ。
(――ああ、そうか……)
こんなに心が揺さぶられるのも、あれほど彼女について知りたいと思ったのも、今目の前にいる彼女が好きだからだ。
きっと、出遭ったあのときから。
完全に、アスランの一目惚れだった。
「ア、アスラン……?」
「おいおい、マジですか?」
これほど優しく微笑むアスランを見るのは初めてだろう、ラスティとニコルは驚きを隠せないようだ。なぜなら、例え社交辞令であっても、アスランが女性と過ごして『楽しかった』と笑う人間ではないと彼らは知っていたから。
だが、『二人の世界』に没頭していたアスランは、すっかり忘れていた。――彼女の肉親がすぐ傍でこの様子を見ていたことを。
「……お前ら、知り合いだったのか?」
突然、割り込んできたカガリに、アスランは既視感を覚える。
キラが『口煩い』と言っていた兄はカガリのことだろうから、あのとき、電話を掛けてきたのも彼に違いない。
恋愛の機微には疎いくせに、彼の本能は妹に好からぬ想いを抱く人間を察知したらしい。重ね重ね良い所で邪魔してくれる、とアスランは眉間に皺を寄せた。
「彼女とは、今年の二月に知り合ったんだよ」
「そぉなの、二月に友達の誕生日パーティがあったでしょ? そのときに、ちょっとだけお話したの」
アスランは『二月』と『友達の誕生日』というキーワードに反応する。
にっこり笑って、アスランとの出逢いを説明するキラの肩を掴んだ。
「君はラクスとはどういう知り合いなの?」
「僕とラクスは寮のルームメイトなんです」
やはり、あのピンクの歌姫はキラのことを知っていて、わざとアスランにその情報を隠していた。
「……そう、なんだ」
アスランの耳に、彼女の高らかな笑い声が聞こえた気がした。
PR
この記事にコメントする
■ カレンダー ■
■ カウンター ■
■ 最新記事 ■
■ カテゴリー ■
■ リンク ■
■ 最新コメント ■
[12/15 うさチ]
■ 最新トラックバック ■
■ プロフィール ■
HN:
神里 美羽
性別:
女性
趣味:
読書・カラオケ・妄想
自己紹介:
日々、アスキラとロク刹の妄想に精を出す腐女子です。
ロク刹は年の差カッポー好きの神里のツボを激しく突きまくりで、最早、瀕死状態。
アスキラはキラが可愛ければ何でもオッケーで、アスランはそんなキラを甘やかしてればいいと思います。
そんな私ですが、末永くお付き合いください。
ロク刹は年の差カッポー好きの神里のツボを激しく突きまくりで、最早、瀕死状態。
アスキラはキラが可愛ければ何でもオッケーで、アスランはそんなキラを甘やかしてればいいと思います。
そんな私ですが、末永くお付き合いください。
■ ブログ内検索 ■
■ P R ■
Designed by TKTK
PHOTO by Metera