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ガンダムSEED(アスキラ)&ガンダムOO(ロク刹)の二次創作小説サイトです。
2025/05/24 (Sat)
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2009/10/28 (Wed)
 白み始めた、空――――。
 数時間前まで暗かった部屋は柔らかな朝の光を受けて、薄っすらと明るい。

 静まり返った部屋で、アスランは何度目かもわからない寝返りを打った。
「……眠れない」
 原因はわかっていた。スースーと穏やかな寝息を立てる、隣のベッドの主だ。――否、正確には本当の主ではなかった。ひょんなことから数日になるか数ヶ月になるか見当もつかない男子校での生活を余儀なくされた、愛しい彼女。
 何度も夜を共にしてきたはずなのに、こんなに緊張するのはどうしてだろう。

 キラとは共通の知人のパーティで運命に導かれるように出遭い、一目で恋に落ちた。そのときはお互いの名前も素性も明かすことなく別れたが、アスランはキラをずっと忘れることができなかった。その後、偶然にもルームメイトから紹介された双子の妹というのがキラで、アスランはこの幸運を神に感謝した。その場で人目も憚らず口説いたのが、今から一年ほど前のことだ。

 再びゴロンと寝返って隣のベッドを見遣れば、白い上掛けがこんもりと小さな山を作っている。
 不意に彼女の寝顔を見たくなって静かに起き上がると、隣のベッドへと近づく。
「キラ……」
 床に膝を突いて覗き込み、顔に掛かった前髪を梳きながら恋人の名を呟いた。
 一昨日、海の見えるザラ家の別荘で一時の別れを惜しんで直前まで熱を交し合った恋人が、今アスランの目の前にいる。ラスティには『不謹慎だ』と言って強がって見せたが、この存在がこの場所にいることを本当は誰よりも嬉しく思っていて。眠ってしまったらすべてが夢になってしまいそうで、アスランは一睡もできなかった。

 いっそのこと、キラの兄であるルームメイトがこのまま戻ってこなければいいのに……。
 そんなことになれば一番困るのはキラなのに、そう思ってしまう自分に呆れるばかりだ。
 アスランは自分の葛藤など知らずに幸せそうに眠るキラの隣に滑り込んだ。
(少しだけ……ほんの少しだけだから……)
 自分にそう言い聞かせて、いつものようにキラを自分の胸元へと抱き寄せると、キラも無意識にアスランの胸に頬を摺り寄せ、アスランのパジャマをぎゅっと握り締めた。
「……アス……ラン」
 吐息と共に吐き出した、自分を呼ぶ声。
 愛しさが募って、キラの栗色の髪に口づけると、アスランは知らぬ間に眠りに堕ちていった。





 目覚めたキラがいつの間にか同じベッドで眠るアスランを見て悲鳴を上げるまで、あと数時間――――。



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2009/10/28 (Wed)
 ――――夏休み最後の朝に、それは起こった。


「カガリー。僕、もうすぐ空港に行くけど――って、何してんの!?」
 双子の兄の部屋の入り口で、少女は固まった。
「キ、キラッ!!」
 バルコニーの手すりに片足を掛けたカガリが、少女――キラを振り向いて驚きの声を上げた。

 カガリはこの屋敷があるプラントのザフト学園で、キラはオーブ連合首長国のヘリオポリス市にあるオーブ女学院でそれぞれ寮生活をしていて、長期休暇はいつもここで過ごすのが当たり前になっていた。
 それぞれの学校は始業式の前日に寮に戻ることが決っているから、キラも今日の朝一の便でオーブに帰ることになっていたのだが。
 明日から新学期が始まるというのに、カガリが学校に戻らず、ここから抜け出そうとしているのは明白で。

「ちょ、ちょっと、カガリッ。どこに行く気!?」
「キラ、頼むから見逃してくれ。オレは真実の愛を見つけに行くんだっ!」
 カガリが先週、見合いをさせられそうになったのはキラも知っていた。見合いと言っても形式だけで、実際には将来『ヤマトコーポレーション』を継ぐカガリに少しでも強固な後ろ盾を作ろう、という両親の思惑に沿った政略結婚に近いものだった。
 しかし、相手がどんな人物なのかはキラは勿論、カガリさえも知らなかった。カガリが見合い相手の資料を目を通す前に問答無用で焼き捨てたからだ。更に、当日も仮病を使って約束を反故したため、結局見合いは先延ばしになっていた。

「キラだって、得体の知れない相手が例え義理でも姉になるのは耐えられないだろう?」
「何、訳のわからないこと言ってるの! 大体、学校はどうするつもりさっ」
 キラはカガリを止めようと間合いを詰め、彼の腕を掴もうとした――が。

「ザフト学園にはお前が代わりに行け」

 パサリとどこから出したのか、カガリは自分の髪に似せたウィッグを取り出してキラの頭に被せた。
「はぁぁぁっ!? じゃあ、僕は? オーブ女学院はどうするの?」
「それは心配ない。オーブ女学院にはすでにキラが病気で長期入院している旨の届けは出してある」
 いつからここを出て行く算段をしていたのかはわからないが、用意周到である。
 キラはあんぐりと口を開けた。
「キラは成績優秀だし、多少休んだところで何も問題ないが、オレはダメだ。成績が悪い上に出席日数まで足りなくなったら目も当てられない」
 それは君のせいで僕に責任を押し付けないでよ、と言いたいのに呆れて言葉も出てこない。
「まぁ、ルームメイトはアスランだし、オレとキラは体型も容姿も似てるから大丈夫だ」
 普段はキラと身長が変わらないことに不満を漏らしているのに、こんなときだけ都合のいいカガリをキラは恨みたくなった。
「わ、悪かったね、貧乳でっ」
「悪いのはキラじゃない、アスランだ。きっとあいつの揉み方が足りないんだ。よく揉んでもらえば大丈夫さ」
 とても慰めには聞こえない慰めの言葉を掛け、人の恋人のテクニックにまでダメ出しをして、カガリはやはりどこから取り出したのかわからないザフト学園の制服を、キラの手に押し付けた。
「オレはもう行く。後は頼んだぞ、キラ」
「あ、ちょっとっ!」
 カガリへと伸ばしたキラの手が空を切る。
 易々と手すりを越えたカガリは、宙を舞い、軽やかに芝生の上に着地した。それから、ブンブンと大きく手を振って駆け出すと、屋敷を囲う柵を乗り越えて姿を消した。

「――もうっ、どうすんのさ、これーーーっ!!」



 教育係のキサカがカガリの部屋のバルコニーで途方に暮れたキラを発見したのは、それから数時間後のことだった――――。



 

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HN:
神里 美羽
性別:
女性
趣味:
読書・カラオケ・妄想
自己紹介:
日々、アスキラとロク刹の妄想に精を出す腐女子です。
ロク刹は年の差カッポー好きの神里のツボを激しく突きまくりで、最早、瀕死状態。
アスキラはキラが可愛ければ何でもオッケーで、アスランはそんなキラを甘やかしてればいいと思います。
そんな私ですが、末永くお付き合いください。
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